『クイーンズ・ギャンビット』と恋-ベルティックが示す新しい男性像-【ネタバレあり考察】

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Netflix制作の話題作『クイーンズ・ギャンビット』!惹き込まれて一気に観てしまうドラマでした。

フェミニズム的にも重要と評される本作の魅力を私なりに分析してみると、新しい男性像を示したことが挙げられるのではないでしょうか?

「え?女性が主役の作品なのに男性像?」
と思われるかもしれませんが、最後まで読んでみていただけると嬉しいです!

 

あらすじ

1950年代の児童養護施設で、人並外れたチェスの才能を開花させた少女は、依存症に苦しみながら、想像もしていなかった華やかなスターへの道を歩いていく。 
出典:Netflix公式

 

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ハリー・ベルティックというキャラクター(ここからネタバレあり)

 

個人的に本作で最も印象に残ったのがハリーポッターのダドリー役で有名なハリー・メリングが演じたハリー・ベルティックというキャラクター。

 

彼の描かれ方が、とても新しく感じたんですよね。

 

どこが新しかったのか

いちばん新しいと感じたのは、主人公ベスのために歯の矯正をしたというセリフ。

ちなみに英語の表現としては、下記のとおりになります。
I had my hair cutと同じ、「〜してもらう」の構文[ 第5文型 SVOC ]かと思います。
厳密には自分で矯正するわけではなく、歯医者さんに行ってやってもらうので、この形になるんですね。

And I, um, got my teeth fixed.
えーっと、歯を直した。

You’re the reason I got my teeth fixed.
歯を直したのは君のためだ。

 
歯の矯正っていう、見た目に関わる部分を直してきたっていうのが、すごく新しい!と思ったんですよね。

やっぱり、まだまだ現代でさえ、見た目を気にすべきなのは女性だけで、男性は中身で勝負だ!みたいな論調もあるじゃないですか。
なので、ワタシ的にはベルティックの好感度、爆上がりのシーンでした!!
見た目でジャッジされうるということに対して、他人事ではないんですね、彼は。

強くなくても支えられる

ここからはもっと本作の根源に関わるところかと思うんですが、それは「強くなくても支えられる」ということ。

 

伝統的な物語の定型としては、女性が自分より強い男性に守られてハッピーエンドというものが多い気がします。

でも、そうなると、どんどん「強い女性」が描かれるようになった現代では「強さのインフレ」が起こりがちだと思うんですね。(少年漫画の終盤とかでよく起こるやつです…笑)

 

だから、従来の強い男性像とは異なる形の、新しい男性像を提示することが大事になってくるのではないでしょうか。

こんなことを言うのは自分でもどうかと思いますが、正直、「強い女性像」を描くのはそんなに難しくありません。だって、今まで男性がやってきたことを女性がやれば、強い女性という印象を与えることができます。

でも、新しい男性像を描くのは、そう簡単ではないと思います。まだまだエンタメの本場ハリウッドでさえも、多くの作家が模索している最中ではないでしょうか…。

 

そんな時代において、ベルティックのキャラクターは、重要な一歩を担っていると感じました。

 

ベルティックはチェスの腕前では、ベスを打ち負かすことはできませんが、ベスを支えることはできていたと思います。
チェスの本を持ってきたり、練習相手になることもそうですが、アルコール依存に関しても、気にかけてくれてましたしね。(実際に再起のきっかけになったのはジョリーンとの再会が大きいですが)

 

後は、最終決戦での、チームによるサポートですね。ベルティックだけでなく、ベニー・ワッツや他の仲間達も集結します。結局はチームの読みにない展開になるんですけどね(笑)

この部分、町山さんがTBSラジオ「たまむすび」で、
「最後はドラゴンボールですよ!」的なことをおっしゃってました。

 

ドラゴンボールのカップル像って新しいよね

町山さんは元気玉的なことを言いたかったんだと思いますが(笑)、そういえば、ドラゴンボールで描かれてきたカップル像って新しいよな!って思うんですよね!!(いきなりの超絶私見)

なんでしょうね、悟空とか確かに強いけどニートっちゃニートですし、ブルマとベジータもヤムチャと長年付き合ってきたブルマと戦闘一筋っぽいサイヤ人王子の組み合わせであったり、18号とクリリンなんかも恐らく奥さんのほうが強いと思いますし。

 

恋愛感情を持たない、ある意味アセクシャル的な存在であるピッコロさんが実の親よりもいちばん親としての役割果たしてるよな…と思ったり。

 

これは完全に私見なんですけど、案外女性向けの漫画のほうが従来の理想的な男女像やカップル像を再生産しちゃってたりするような気もするんですよね。
男性の方が背が高くて、それなりに周りから一目置かれるような存在で…みたいな。

女性向けの作品が悪いっていうわけではなくて、もちろん女性向け作品のほうが現代の社会の枠組みみたいなものを、ちゃんと意識してるんですよ。だから、真っ向から社会の枠組みと対峙するような作品が作れるわけで(有名なところだと逃げ恥とか?)

多分、男性向け(少年向け?)作品って、社会の枠組みなんて意識すらしてないんですよね、よくも悪くも。
でも、だからこそ、案外、そういうの飛び越えて、「あ、こんなカップルも全然ありじゃん!」っていう像が当たり前のように転がってたりもする。

うまく言えないのですが、社会から逆算して「男性は全員そう考えてるだろう」と思っても、ときにそれは違って、男性はそんなこと意識すらしてなくて、女性の側が空回っていることもある気がします。
この無意識こそが強者の証明であって、本当は男女ともに同じ意識があってこそ社会全体が変わっていくんだろうとは思いますが…。

 

しかし、個人レベルで言うと、自分が男女の役割的な固定観念に囚われていると思ったとき、ドラゴンボールを読むといいかもしれないということです(笑)

 

他にもタウンズとかアルマとか魅力的で語るべきキャラクターはたくさんあるのですが、今回はこのあたりで!!

アイキャッチ画像出典:Photo by Steve Johnson on Unsplash

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